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「嵐の 中山公演」 2000-05-01

毎度伊丹谷です。
今日から5月。もう2週間以上中国に滞在している事になる。
まだ 1週間広東省でコンサートが続く。
体はもつのだろうか…

午前8時、茂明からバスで6時間かけて今日の公演場所、中山に移動。

ここは香港から1時間くらいのところにある中山という街。

今日の公演はちょっと特殊。
いつもはワンマンのホールコンサートだが今日は中国で大変有名な4人歌手達と伊丹谷良介黒龍楽団の夢の共演ライブイベントである。

午後2時、中山のホテルに到着。
中山に到着直後、スタッフは現場に直行。
今日の予定がどうなるか不安なまま、午後5時までバンドメンバーはホテルで待機。

午後5時、バスで現場へ向かう。

外は雨、雨、雨…

まったく雨はやまない。
むしろどんどん強く降ってくる。

雨の中、伊丹谷良介黒龍楽団は会場入りした。
大きな広場の中に簡易ステージが組まれていた。

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「このまま雨よやんでくれ…」みんなそう祈っていただろう。

午後6時、雨は強くなる。
どしゃ降りの中 雷もゴロゴロと鳴り出す。

それでもステージのセッティングは続く。
ずぶぬれになりながらもスタッフは作業を続ける。

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午後7時、開場の時間。何と客席に傘をさしてどんどん客が入ってきている。
雨と雷はより激しくなっているのに…。

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「この嵐の中、本当にやるつもりなのか…」
この広東省では今の季節、雨は毎日のように降り、すぐやむ。

それになれている現地のスタッフは黙々と作業を続け、お客は楽しそうに傘をさして開演を待つ。

ステージには簡易的に作られたビニールシートの屋根があるだけ。
ステージ上は雨でボトボト。
どんどん雨と雷は激しくなる。

日本のスタッフやメンバーに緊迫感が漂う。
危険を感じ、メンバー全員は自分たちの楽器をかたずけ始めた。

ステージの簡易ビニール屋根に大量の雨水がたまり、支えている柱がミシミシと大きく音を立てる。

その時
「ごごごごごごごごごーーーーーバキバキバキバキバキバキバキバキーーーッ」

雷の音と共に天井の柱が折れ、簡易のステージ天井屋根が崩れ落ちて来た。

雷雨の中、会場は大混乱。
恐ろしい事に自分を含めメンバーはステージ上に4人いた。

幸いメンバーは無事だった。
「本当に死ぬかと思った。」

突然のアクシデントであった…。

その後メンバー全員、楽屋に戻る。
もう今日の公演はできないと判断し、すぐホテルに帰った。

帰りのバスの窓ガラスに、まだ激しい雨が叩き付けていた…。

皮肉な事に私たちがホテルに戻った直後、雨は嘘のようにやんだ…。

なんと会場では伊丹谷良介黒龍現代音楽団以外のアーティストのコンサートが始まった。
会場には何も知らない何千人のお客さんが伊丹谷良介黒龍現代音楽団の出演を待っていた。

すぐ中国スタッフは私たちのホテルに駆けつけてこう言った。
「申し訳ないが挨拶だけでもよいからステージにまた戻ってくれ、みんなが待っている…」

かといって「すんません、機材がだめになって今日は何もできないんです。」とは言えない。

機材は濡れているし、会場のバンドの音響は何も用意されていない。
今日の演奏は絶対に不可能である。

他の出演者はバンド形式でない為、どんな状況でもコンサート可能だが、私たちはPAシステムがないと何もできない。

その後、メンバーはミーティングをした。
今、どうするべきか…

メンバー全員でいろいろと話しあった結果、出演形式はどうであれ、全員で今日のステージに上がる事に決めた。

会場には伊丹谷良介黒龍現代音楽団を楽しみに待っているお客さんが何千人と待っている…。
彼らを裏切るわけにはいかない。

仕方がない。
「とにかくステージに戻ろう…」という結論に達した。

私たちはすぐにバスで会場に戻った。
からっと雨のやんだ夜空の下、広場の特設ステージと何千人のお客がいた。

ステージでは香港の有名な歌手 ウォン・ビーシャーのコンサートを行っていた。

結局、伊丹谷がカラオケとアカペラで2曲歌う事になった。
メンバーも一緒にステージに上がってきてくれた。

司会者の紹介で伊丹谷良介黒龍現代音楽団はステージに上がった。
会場は大歓声。

司会者と伊丹谷でトークを交わした後、何千人の客席に声をはりあげて伊丹谷はハッキリこう言った。

伊丹谷 「皆さん今日は本当にすいません」
「夕方の雨で楽器が濡れてバンドでコンサートができなくなりました。ごめんなさい」
「でも一生懸命歌いますので聞いてください。」

観客「うぉーーーーーーーーーっ」

バンドメンバーとお客さん全員で大合唱した。

とにかくステージに戻って良かった…

そして今日のコンサートの幕を閉じた。

こんな経験は伊丹谷も初めてであった。
もうこの気持ちは言葉では伝えられない。
つらくて、うれしくて、くやしくて …

とにかく今日のコンサートは大ハプニングの連続であった。
いつもの10倍、いや100倍疲れた。

今日は朝から晩までバンドもスタッフも複雑な気持ちで一杯であったに違いない。
今、本当にみんな頑張っている。

とってもイカシタやつらである。
そんな彼らを誇りに思いたい…

さあ、これからも何がおこるかわからない。
ここからが本当の正念場である。

広東省のコンサートはまだまだ続く。

ではまた明日

2000/05/01

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