邯鄲体育館コンサート当日、邯鄲市ロック 1999-11-26
そんなこんなで客がドヤドヤ入りだした。ステージが始まる前、楽屋に少年少女がどやどやとやってきた。
スタッフのファン止めがあったが、様子がすこし変なので楽屋に入れてあげた。
するとかわいそうなことにお金がないから今日の公演が見られないらしい。そりゃそうである。
一番高い席でチケット一枚120元(日本円で1800円ぐらい)もするのである。
日本の約10分の1の貨幣価値である中国では要するに18000円もすることになる。
15、6歳の少年少女にはもちろん買うことができない。
その子たちは英語がペラペラ、中国語では会話ができないので英語でコミュニケーションをとった。
「好きな曲は何?」と聞くとマイケルジャクソンの曲を歌っていた。
大変情報に飢えていたが、その子たちは結構いろいろ知っていた。
10分くらいコミュニケーションをとった後、彼らにサインを求められたので、 一人ずつサインしてあげた。
目をハートマークにして帰っていった。
僕は比べたくないが、日本人のコギャルと比べざるをえなかった。
純粋な彼らの目と気持ち、意識、夢はたいへん美しい。
このどちらが良いというわけではない状況に僕は悩まされた。
ただ今の中国人の少年少女を目の当たりにして感じたことは
やはり中国は21世紀の眠れる獅子であることは間違いない。
午後7時30分、開演15分前、衣装を身に纏った私達メンバーは全員楽屋で円陣を組む。
そしてロックの神に今日、ミラクルを与えてもらえるように祈る。
会場はガヤガヤではなく、「ウォ~~~~」とざわめきがある。
なんといってもキャパ4000人である。 邯鄲市では今まで外国人で成功したアーティストはいないらしい。
なぜなら今まではクラシック、オペラ、歌舞伎などのショーばかりで、
客は4000人いても途中で帰り終演時には200人くらいしか残ってなかったらしい。
面白くないとすぐ帰る中国人。
そんなプレッシャーもふっ飛ばす勢いで伊丹谷良介黒龍現代音楽団のステージは幕を開ける。
会場入り
大きな垂れ幕が掲げられた。すごい!!
午後7時45分、司会の中国人が客をあおる。
何を言っているのかさっぱりわからんが、 客は興奮に満ち溢れている。
「さぁみんな今日は日本からやって来た伊丹谷良介黒龍現代音楽団の登場だ!!みんなのってるか~!!」
「いえ~~い!!!」「ウォ~~~~!!(客)」ってな感じ。
まるで今からマイクタイソンでも出てくるんかえっ!!ってな感じの中、雅楽の和風なSEが会場をなめまわす。
スポットを浴びてバンドメンバーがアリーナの中央ステージに登場。
客は大喜びして騒いでいる。 SEが鳴りやむやいなや、 バンドは「かれたばら」のイントロの演奏を始める。
24小節の長いイントロの中、 伊丹谷良介がステージに登場。
客はオリジナル曲にもかかわらず、歓声を上げている。
そんな中、伊丹谷良介黒龍現代音楽団のロックショーはスタートした。
1曲目のサビへと盛りあがっていく中、ギターは叫び、ベースはうねりドラムは暴れだす。
私はマイクにかぶりついて「かれたばら」をシャウトする。 攻撃的なエンディングで1曲目を終える。
2、3秒会場はしーーんとなるが、 4秒後には拍手の嵐!!
「ワン!ツー!スリー!フォー!」 「ジャーーーーン」
いかにもロックバンドらしく2曲目の「デジタリアンラブ」に突入! 客はビートにあわせて手拍子を打ちだす。
ホーンセクションはテーマを吹きちらす。
歌詞は日本語だがそんなこと関係なく会場はツイストアンドシャウト状態である。
2曲目が終わってMC。
伊「ハーーーイ!」 客「ハーーーイ!」 伊「ニーハオ!!」 客「ニーハオ!!」
伊「ライタオ ハンダン フェイタンガオシン」(邯鄲に招いてくれてありがとう) 客「ワーーーーー!!」
伊「シャーメーシュー I like you!!」
(次の曲はI like you 注:本当の曲名は I don't like you) ロックらしいギターのリフが会場に響きわたる。
この曲でメンバー紹介。 それぞれのメンバーソロでこの曲を締めくくる。
ここにきて土木作業?する羽目に
リハ中でも関係なさそうな人がだんだん増えてくる
そして中国で大人気の「My heart will go on(タイタニックのテーマ)」
「Mama, do you remember(人間の証明のテーマ)」のバラードを熱唱。
まるで火に油を注ぐように会場は大満足。
※注記 ちなみに「タイタニックのテーマ」は映画が中国でも大ヒットし、
「人間の証明のテーマ」も日本人の知らない間に大ヒットしたらしい。
だから全員この2曲は知っているというわけだ。
おもしろいことに中国人は知っている曲がはじまると、喜びの表現がきまっている。
曲紹介するとまず「おーーーー」と言う Aメロにはいると拍手する。
1番が終わるとまた拍手 2番のサビでは全員大合唱。
くどく終われば終わるほど拍手喝采!!
まるで昭和の紅白歌合戦のようなリアクション。
演奏をやってるほうは、 大変やりがいがあるリアクションをしてくれる。
世界のエンターテイメントファンよ・・・進化もすばらしいがこの気持ちを忘れてはいないか・・・?
前半の最後の曲「TOKIO」で客とコールアンドレスポンス。
私もコールアンドレスポンスが好きだが、中国人4000人とコールアンドレスポンスするとは夢にも思わなんだ・・・。
そして前半終了で休憩。まるでサッカーのような構成である。
その後司会の登場。メンバーは一旦楽屋へ・・・・。 この日の司会は劉建新、彼がこの企画のBOSSである。
彼は邯鄲市生まれの邯鄲市育ち、 言わばこの土地のスーパーヒーローである。
彼の仕事っぷりでこの企画を実現したわけである。
一見毛沢東似の彼は僕らのコンサートを盛り上げるMCをしている。
そして私がステージに呼ばれた。
劉「何か彼らにメッセージはありますか?」 伊「みなさん本当にありがとう」
劉「○△※Φ∝∑∮」(訳してくれている) 伊「さ来年は21世紀です。」 「そしてアジアの世紀でもあります。」
「私は日本人、あなたたちは中国人。同じアジア人です。」 「私達で21世紀を盛り上げましょう!!」
客「ウォーーーーー!!」
警備の兵隊さんと写真を撮るのが流行る
いよいよ開演
この上ない幸せなMCであった。
その後司会の劉さんがピアノを弾き、 この日のために作詞した曲「我愛(イ尓)」を大熱唱。
その後、サックスのかすみちゃんとパーカッションのぴかりと中国の民謡「モーリーファー」を演奏。
会場はベリーピースな空気につつまれる。 そして後半戦、全員でロックショーの再開。
中国の有名なロックナンバーをいれつつ、 オリジナル曲をぶちかます。
やはり特にすごかったのは「イーアルサンスー」(通称)に「朋友」である。
だれもが知っている中国のロックナンバー。もうフルコーラスお客4000人全員が歌いやがる。
もうその迫力といったらスゲーーーとしか言いようがない。あんな光景見たことがない。
アンコールの前には”イタミヤ”コールまでしてくれた。 「イータミヤ!!」「イータミヤ!!」。
「おまえらどんだけワシを勘違いさすねん!!」って感じである。
アンコールのフィナーレは「諸世界充満愛」で締めくくる。 中国で有名なウィアーザワールドのような曲である。
劉さんは曲中に日本人スタッフ全員をステージにあげた。
演出スタッフ、衣装スタッフ、音響スタッフ。
「っ!!!」音響スタッフをあげたら誰がPAすんねん!それをも感じさせないくらいピースなエンディング。
曲のエンディングで全員ワインでカンペイ(乾杯)!!! 「ピーイーアーーーーン(平安)!!」
というフレーズでライブの幕を閉じる。
なんとも感動的なコンサートであった。
私は今までの苦労が走馬灯のように頭をよぎり、 うれしさと、くやしさと、幸福感・・・もういっぱい何かが込み上げて来た。
とにかく反省点は死ぬほどあるが「ここまでやってきてよかった」と感じた。
「この苦労とうれしさとみんなのパワーを今後絶対無駄にしない」と私は誓った。
ステージが終わってみんな良い顔をしていた。とにかく本当によかった。
楽屋に客がどっと押し寄せて来た。どう見ても自衛隊にしか見えない警備隊が客をとめていた。
「こんなんマイコー(マイケルジャクソン)のプロモビデオでしか見たことない・・・」って感じであった。
ほんと最高の夢を見せてくれたコンサートであった。そして、さぁこれからがはじまりだっ!!
と気持ちをゆるめないように気をひきしめてホテルへ帰った。
明日はうってかわって地獄の早朝野外ライブ。
「なんでやねん!!」
前半が終了して楽屋で休憩中♪
劉さん・かすみさん・ぴかりのトリオ
閉演直後。おっつかれ~!!