石家庄公演 またもや大成功!!しかし・・・ 1999-11-20
今日は石家庄でのはじめての公演日である。
朝から日本人スタッフと中国人スタッフはせっせと劇場でしこみにはいっている。
昼過ぎ、私は劇場(河北会館)入りした。ホテルからタクシーに乗って劇場に着いた私は思わず目をこすった。
ななななんと、高級感あふれる劇場の外装の中、でかでかと宣伝用の垂れ幕がかかっている。
「日本 伊丹谷良介黒龍現代音楽団」
おおっ・・・こんなばかでかい自分の名前をみたのははじめてである。
劇場入りするともっとおどろく!!
ホールの扉をひらくとそこは大学のくそでかい講義場とフェスティバルホールを足して2で割った感じのホール。
席にはテーブルがついてある。 そしてステージの上にはまたもや赤バックに白地でくそでかい私達の名前が垂れ下がっている。
照明は天津に比べればすばらしいシステムが整っている。
コンピュータシステムで操作されるらしく「ウィ~ン、ウィ~ン」と音をたてながら上下左右したりしやがる。
なななんとも不思議なコンサート会場である。
ステージから客席を臨む
ホール前に設置された看板 10m×5m程ある
リハーサルが始まると客席に人が集まりだした。「あんたら何しにきてるの?」と思わせる中国人がたくさんいる。
ちょっと珍しい僕らの楽器の前に何をするわけでもなく群がっている。
見たことない楽器なんだろうか・・・?それとも勉強しているんだろうか?んー、わからん・・・・。
その後、私達は邯鄲市のTVのインタビューを楽屋で撮り終え、 午後8時ステージへ向かう・・・。
衣装を着た私達はロックスターへと変身していく。
幕の向こうではガヤガヤと客がしゃべっている。やがてSEが流れ出し幕が開いた。
大歓声の中、伊丹谷良介黒龍現代音楽団のスーパーロックショーがはじまった。
お客ののりはすばらしかった。
新聞に打たれた広告。記事もあった。
インタビュー風景
今日の公演ではいろいろな束縛があったにもかかわらず、大盛り上がりであった。その束縛とは
その1 客席に降りるな
その2 マイクスタンドを投げるな
その3 ステージの前の植木鉢を倒すな
その4 水を吹くな
である。そんな文化部からの命令の中、それでもロックショーをぶちかますことができた。
朋友(パンヤオ)では客席全員がフルコーラス一緒に歌いやがる。
そんな素晴らしすぎるロックショーもやがて幕を閉じた。
終演後の楽屋には一緒に写真を撮りたがっている若者が何十人も待っていた。
「イータングー(伊丹谷)!!イータングー!!」と言ってサインを求められる。
本当にまぼろしのような体験である。 「ここで調子に乗ったらえらい目にあう」と肝に命じながらその会場を去った。
夜はメンバー全員でホテルに戻りまたもや大宴会。そうしてこの日は終わった。
開演寸前!!
でもどうしても気になることがある。やはりこれはただのまぼろしなのである。
もちろんスタッフやメンバーの努力のおかげでこのコンサートは成功している。
しかし、私はもっと違った喜びを求めたい。
もしかしたらこの大歓声は求めているものかもしれないが、そうではないのかもしれない。
環境だけにあおられてこうなっているのでは、と思う。
大阪のライブでこれだけ出待ちがあるのか?
あれだけお客と一つになることができるのか?
ただ珍しいちょっと上手い日本人だけなのに、ここまで評価されて良いものなのか・・・・?
もちろん努力はしているが、はっきりいってこの2回のコンサートで感じたことは、
私達程度のことをやればそれなりにウケることは間違いない、ということだ。
しかし私達程度のバンドは世界に五万といる。そんな時にロックスター気取りしていると本当にえらい目にあう。
このまま日本に帰っても今までと同じ状態が続くことは目に見えている。
その時になって自分のちっぽけさを感じてからでは遅い。
もっとこの中国ツアーの間に一回りも二回りも十回りも成長する必要がある。
少なくとも私はそうしないといけない。そうでないとこの企画は0点、いや、-100点になってしまう。
今日、私には反省点が腐るほどあった。 まだまだ私は本物ではない。
ロックスターは精神的にももっとロックスターなのだ。
客観的に見て、このコンサートで調子に乗ってしまうのは仕方ないと思うが、
ただ一つ絶対に忘れてはいけないことがある。
それは、この企画はまぼろしに過ぎず、 これを生かすも殺すも自分次第なのである、ということだ。
僕の人生の中でのこの今のコンサートツアーは、次の自分に対しての美しいガラスの階段なのだ。
今のままでは必ず踏み落とす。今だからこそ一段一段しっかりと上っていくことが大事なのだ。
これは神(伊丹谷利一※1)のいたずらなのである。
※1 私に芸術のあらゆる面で影響を与えた今は亡き祖父
バックステージより
終演後、花輪を贈って下さった石家庄の方々と
サインをせがんできた少女と
石家庄文化局の方々と打ち上げ